青春という言葉

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「ほらっ、そこ!何をボンヤリしとるんだ。」 頬杖をついて、のそのそとゲームやマンガの世界を漂っているときだ。 ボケーッとした顔が目についたのが、担任の教師が顔を真っ赤にして怒鳴ってきた。 グレーの口髭をもしょもしょと生やしている、二重顎どころか三重顎になった、中年でしたがこれから老人になる予定ですと言った風な、年配とおじさんの真ん中あたりの年齢の教師。 顔が丸いから顔を真っ赤にするとゆで卵みたいだ。 顔ばかりでなく体のほうもデップリと太っていて、似合わないスーツはビシッと着こなしているというより無理やり体をつめ込んでいる感じだった。 似合う似合わない以前に、ボタンがはちきれそうなのが気になる。 太った男は背も低いという小説の当たり前のようになってしまったイメージをそのまま表していて、小柄というよりも小男といったほうがピッタリだ。 耳の後ろのあたりだけ細々と毛が生えていて、てっぺんは完全にハゲていた。 「はぁ~い。」 「その間の抜けた返事は何だっ!反省せんか!」 「あー、はいはい。」 「なっ……。」 「おーい、やりすぎだぞ。」 後ろの席の前久保が、こっそり背中をつっついてきた。 校則を絶対に守らず制服を着たことがなくて、今日も汚れたジャージに片手にゲーム機を持ち、だぼっとしたジーンズを身につけた全面的に問題児で不良の前久保は、小学校の時からずっと俺と同じクラスだった。 出会ったのが奴が転校してきた四年の時だったので幼馴染とはいいがたいが、席が近くになることがよくあったり家が近所だったり休み時間に一緒に話したりして、一年の時からの友達よりずっと仲がよかった。 校則では、男子は髪を肩より伸ばしてはいけないと決まっているのに、背中の半分を覆うくらい髪をのばし、結んでもいない。 しかもこれは校則以前の問題なのだが、その髪をくっきりとした茶色に染めていた。 校則違反はやりまくるし、人をイジメたり乱暴な言葉を使うこともある。 ゲーム機を持ってくるようになったのは中学に入ってからだが髪は以前から染めていた。 ただしこんな格好でも根はいい奴で、自分より弱い人間や年下の子供は絶対にイジメない。 けんかっ早いから売られたケンカは必ず買うが、相手が弱かったり年下だったりすると手加減をしてわざと負けてやったりする。 相手が嫌な奴なら容赦なくたたきつぶすのだが。 さらに怖いのは、友達や家族の悪口を言われた時だった。 彼が転校したばかりの時、自身の悪口を言われても受け流すだけだったのに、俺の悪口を聞いた時は怒り狂って相手に入院コースの重傷を負わせ、警察沙汰になったのだ。 大人に反抗したり校則違反を始めたのも、親が離婚してこっちに引っ越してきてかららしい。 しかも父だか母だかは分からないが、家を出たほうの親が間もなく死亡したとかで、いっそうショックを受けているらしい。 といってもこんな悲惨な事件はトップシークレットなので、君も誰かに話さないでくれよ。 親も、幼い時に離婚をしたのだからと彼に同情はしているが、まだあいつも俺も小学生の時に、校則で決まっているからと髪を直すために教師が家に帰らせたことがあったが「この子の自由」と何もしないまま学校へ戻してやっていた。 初めはこりずに家に帰らせていた教師も、不良になっても仕方ないと思うほど辛い環境にある事と言っても無駄だという事が分かったためか彼が校則違反をしても無視するようになったらしい。 俺も、前久保が違反をして校長室に連行になったのを最近見かけていない。 中学に入学したときは、試験では合格点どころかあと一問合っていれば全問正解というところまでいったらしく、小学時代の担任と前久保の親の話もあって、なんとなく特別扱いっぽい感じになっている。 教師も叱る事には叱るが、少し怒鳴り声に遠慮が見られるようだ。 前の学校では違反をしたこともなく覚えが早くて頭のいい優等生だったという噂を耳にしたこともある。 まだ十歳になるかならないかという時期に両親離婚の上片方は死んでしまい、おまけに慣れた土地を離れる事件が起きたら多少ひねくれても仕方がないというようなことを、彼の昔の知り合いが言っていた。
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