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いつも通りの日常だった。
職員室に呼び出しをくらって叱られているあいだ、クラスメイトは自習。
授業中、前久保はトラブルを起こしまくる。
俺もそれに便乗して、廊下に立たされていると必ず永元も仲間になってくる。
この繰り返しで、一日が終わった。
「今日さー。」
先に話しかけてきたのは永元だ。
現在俺たちは本日三回目の「職員室にて~お説教パレード~」から解放され、食事も終えて、昼休みも何事もなく過ぎ(俺と前久保がそろって昼休みが無事終わったのなんていつぶりだろう?)五時間目に騒ぎを起こして廊下に立たされているところだ。
ワンテンポ遅れ、例によって永元も廊下に出てきた。
担任が国語の授業中で音読をしていることをいいことに、俺達三人は仲良く雑談していた。
音読すると喋っていても声がかき消されて担任にバレることはないから、今は絶好のチャンスだ。
すでに廊下に出てから十分ほどが経過している。
「三人で一緒に帰んない?この頃お互い都合つかなくて、バラバラに帰ってたでしょ。久しぶりに、三人そろって帰ろうよ!部活が決まったらまた一緒に帰れなくなっちゃうよ。」
確かに永元の言う通りだと、俺は思った。
このところ三人そろって帰るなんてことは滅多にない。
昨日の入学式の時も、隣のクラスになった永元と連絡がつかず俺と前久保の二人で帰ったのだ。
都合が合わなくなったり家庭の事情があったりして、三人で帰る機会が少なくなったというのもある。
「いいじゃん、いいじゃん!一緒に帰ろうぜ。」
前久保がのってきた。
「そういうと思った。」
永元が笑顔を見せる。
笑い上戸の上に恥ずかしがることを知らない永元は、授業中でも平気で笑う。
「で、吉口、お前はどうする?」
前久保が声をかけてきた。
永元が、興味津々という顔でこちらを見ている。
「俺?今日は都合もいいし、二人がいいなら一緒に帰れると思う。三人そろうなんて久しぶりだしな。」
「わーい、やったー!」
歓声をあげる永元。
「そうこなくっちゃ!」
俺的にかなり古いと感じるセリフを口にし、肩に腕を回してくる前久保。
「お前ら……!!」
このセリフは俺かというと、そうではない。
怒りに満ちた声でこちらをにらんでいるのは、担任の教師だった。
「廊下に立っていろとは言ったが、廊下で友達と話せとは言ってないよな。」
怒鳴っているわけではないのだが、怒っているのは十分伝わってくる。
「ちょっとこっちに来―――――い!!」
「うっわーー!」
俺たちは悲鳴を上げると、笑顔を浮かべながらもばらばらの方向に走り出した。
解散!
まさに、「蜘蛛のを散らすように」だ。
「戻ってこい!」
戻るバカがどこにいる!
笑い声をあげながら、永元は西階段に消えた。
東階段を飛び降りるのは前久保。
他に階段はない……さて、俺はどうしよう?
「なぜ逃げる!」
うわっ、狙いはこっちか!
早く逃げないと……よし、前久保を追って東階段に行こう。
「こらあああ!」
うひゃー!
二階にすべりこもうとして、人影を確認。
ダメだ、前久保がいる!
急いでさらに下の一階へ。
ドタドタいう足音が、遠い。
あの体型だから、階段を降りるのも一苦労なんだろう。
よし、今のうちに隠れよう。
保健室はダメだな。
トイレは嫌だけど、万一の時はここに隠れないと。
教室は論外。
今はまだ授業中だから、教師も生徒もいる。
校長室も同じく論外で、職員室も当然ダメ……って、え!?
もしかして、逃げ場なし!?
二階でバタバタと盛大な音がした。
おそらく前久保が見つかり、担任のターゲットが変わったのだろう。
永元はおそらく逃げ切るだろうし……どうする?
どこに隠れようか?
自問自答していると、担任が来てしまった。
首根っこをつかまれているのは前久保だ。
あいつの運動能力と反射神経でつかまることなんてまず考えられないが、にやにや笑っているし、おそらく面白くなりそうだと感じてわざとつかまったのだろう。
あれ、そういえば教師が生徒の首根っこをつかむのって法律で禁止されてるんじゃなかったっけ?
今思えば、廊下に立たされるのも体罰に入るんじゃ……教師が叱るならともかく、生徒だけで立つともしかして法律違反?
しかも、授業中だ。
まあいいか、俺は法律についてろくに知らない。
きっと、廊下に立つのは体罰に入らないんだ。
それにこの学校は厳しいから、体罰なんて平気でやることだろう。
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