4.解放されたハル

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 おおっと! 自分の単位を落としちゃならないからレポート仕上げなきゃ。奨学金のこともあるし、レポートは必須だ。しかもハルのことにかまけていたからダッシュしなくちゃならない。  でもまぁ、あまり心配いらないだろう。こういうのにはそれほど不安は要らない。  それと最近思うことだが、ハルともっと対等になるべく強くならねばならない。これは必死になる必要がある。あの動きは普通じゃない。ネットで学習したにしちゃたいした眼光だ。まるで本物の格闘家のようだ。  リオはまだ、ベッドで殺人未遂の罪を負うところだったハルを忘れられない。短時間のネットサーフィンであそこまで行かれたら、世界中の格闘家は泣くだろう……  ハルとの会話は削減したくない。ハルで遊ぶことも自分には大事な癒しだ。 (あくまでも『ハルで』)  その他にも細かいことがいくつかあった。  例えば厄介なことに、ロザリアはハルと付き合っている気になっていた。自分に責任があることは承知しているから何とかするつもりだけど、取り敢えずは後回しだ。まだ間に合うだろうと思う。  自分の生活も成り立たせなくちゃならない。  そして、リストのてっぺんには主題があった。  ――ハルをまっとうな若者にする  ミイラと恋? 心が躍る幽霊退治?  ふざけちゃいけない。 (こんなに危ない先輩を放っておけるか!) 何としてでもこっちの世界に連れ戻さなくちゃ。  リオは実はその上に君臨する命題を上手に避けていた。 つまり。『なぜ、こんなにハルについてヤキモキしているのか』  時々その謎が自分をチクチクと刺してくるのを感じるが、そこには素早くバンドエイドを貼っている。 (いいから、そんなの! やること一杯で大変なんだから!)  なぜ大変になる必要があるのか。リオに『突き止めるのはやめておいた方がいい』と、本能が告げている。   
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