2.ハルの 『 恋物語 』

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「俺にはこれしか無いんだよ。考古学に出会って今はそれが自分の全てなんだ」 「ねぇ、例えば恋とかしたこと無い?」  ハルは腕時計に目をやろうとして手を下した。目を見張った。時計をもぎ取って部屋の隅に投げる。ガチャン! と砕けた音がした。こんな感情的なハルを見るのは初めてだ。 「あのな、聞いてもらっていいか?」  普段とあまりにも違うハルに驚くあまり、何回か頷いた。さっきのタオルを顔に当ててぽつりとハルが呟いた。 「ジュディ」 「ジュディ?」 「俺が昔付き合った女の子だよ」 そんな子がいたのにびっくりだ。『恋したこと無いのか?』そう聞きはしたものの、正直あるとは思わなかった。 (この堅物が、恋? 付き合う? 抱き合う? ベッドを……) そこまで考えて、なぜか顔が熱くなった。 「20の頃かな。3つ年上の子だった」 (と……年上ーー!? 3つぅ!? それ、<子>じゃないだろ!) 心の中で変な突っ込みをしているのは自覚しているが、止まらない。 「それで? その……どこまでいったの?」 (なんでこんなこと聞いてんだよーー!) 自分にまで突っ込んでいる。 「……キスした……」 ほのかに赤い顔。 「キ」 言葉が止まる。そこから一気にまくしたてた。 「キスって、それさ! つき合ってるって言うの? それだけ? それしかしてないの?」 (何、確認してんだよ!) 驚いたような顔のハル。 「お前……20になったばかりだぞ? それ以上何しろって言うんだ?」 (この人はアホじゃなかろうか) 「あのね、『つき合った』っていうのは、ベッドにもつれ込んで互いに剥がし合って、感じ合って、目を閉じて、蕩けて、朝にはお互いに見つめ合って……」 (僕は朝からナニを言ってるんだ? 何でこんなレクチャーしてんだよ!) 言いながら己の頭を疑ってしまう。   
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