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「で、考古学にどっぷり浸かった。エジプトは楽しかったよ。現地の連中には荒っぽいのが多くてテコンドーは役に立った」
そうですか。僕はきっちり親父の金でトレーニングしたよ。それで、ネットで覚えたテコンドーに落とされたの……虚しい……
「ね、修道院には行ってみたの?」
「いや。切なくなるから来ないでって言われたから」
(どんだけ純情なんだよ! ティーンエイジャーだってもっとまともな恋愛してるよ)
「エジプトに行ってな。俺はあの雄大な景色に魅了されたんだよ。どこまでも続く砂漠。巨大なピラミッド。心躍る幽霊退治」
(ん? 聞き間違いだよな。そうだ、聞き間違い)
「金無かったのに、どうやって行ったの?」
「不思議なことに定期的に金が送られてくるんだよ」
(そりゃ、どう考えたって不思議だよ!)
もう何回突っ込んでるのか分からない。
「教授が気にせずに使っていいんだと言ってくれて。あの人の言うことなら間違いないからな」
(疑うって知らないの?)
「俺は親も知らないからな。あちこち世話になってここまで育った。みんなに感謝してるんだ。だからその分頑張らなくちゃ……」
「ああ! もう!! 養育費って出るんだよ、世話してくれるのはそれ目当てじゃないの?」
リオは言わなきゃ良かったと心底後悔した。悲しそうなグリーンの瞳。
(知ってるんだ。本当は知っていてきっと違うって自分に……)
「ハル! エジプトに行こう! 僕と一緒に。きっと行こう!」
リオは取りあえず聞いた修道院に行ってみた。案の定、ジュディ・ゲイリーなんていなかった。ハガキ……そういえば、ハルの机の上に飾られていたと思い出す。
部屋に戻るとハルはいなかった。そして机のそばのごみ箱に破られたハガキが捨ててあった。
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