2.ハルの 『 恋物語 』

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「で、考古学にどっぷり浸かった。エジプトは楽しかったよ。現地の連中には荒っぽいのが多くてテコンドーは役に立った」 そうですか。僕はきっちり親父の金でトレーニングしたよ。それで、ネットで覚えたテコンドーに落とされたの……虚しい…… 「ね、修道院には行ってみたの?」 「いや。切なくなるから来ないでって言われたから」 (どんだけ純情なんだよ! ティーンエイジャーだってもっとまともな恋愛してるよ) 「エジプトに行ってな。俺はあの雄大な景色に魅了されたんだよ。どこまでも続く砂漠。巨大なピラミッド。心躍る幽霊退治」 (ん? 聞き間違いだよな。そうだ、聞き間違い) 「金無かったのに、どうやって行ったの?」 「不思議なことに定期的に金が送られてくるんだよ」 (そりゃ、どう考えたって不思議だよ!) もう何回突っ込んでるのか分からない。 「教授が気にせずに使っていいんだと言ってくれて。あの人の言うことなら間違いないからな」 (疑うって知らないの?) 「俺は親も知らないからな。あちこち世話になってここまで育った。みんなに感謝してるんだ。だからその分頑張らなくちゃ……」 「ああ! もう!! 養育費って出るんだよ、世話してくれるのはそれ目当てじゃないの?」  リオは言わなきゃ良かったと心底後悔した。悲しそうなグリーンの瞳。 (知ってるんだ。本当は知っていてきっと違うって自分に……) 「ハル! エジプトに行こう! 僕と一緒に。きっと行こう!」  リオは取りあえず聞いた修道院に行ってみた。案の定、ジュディ・ゲイリーなんていなかった。ハガキ……そういえば、ハルの机の上に飾られていたと思い出す。  部屋に戻るとハルはいなかった。そして机のそばのごみ箱に破られたハガキが捨ててあった。   
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