23人が本棚に入れています
本棚に追加
/76ページ
何としてでも突き止めたいのが『ハルの性生活と生態』。
「ハル。今までさ、むしゃくしゃした時にはどうしてたの?」
誰にだってそんな時があるはずだ。
「むしゃくしゃ…… 走ったり、体を動かすのが一番いいかな」
ずいぶん当たり前の回答だ。
「じゃ、それ以外では? 例えばさ、走りたくても土砂降りだったり」
「その中を走れば結構すっきりするんだよ」
(そうか、それは既にやってるんだな)
「他に何かしないの?」
ハルはしばらく考えた。
「あるにはあるんだけど…… あまり言いたくないな」
リオは(どうやら核心に触れたみたいだ!)と手応えを感じた。自分の予定通り、張りついていればきっと分かって来ると思う。
押しの一手じゃいけない。今までガンガン攻めてきた。そろそろ違う角度で入るべきだ。そう思ってそこで自分の気持ちを押しとどめた。
ちょっと自分に立ち返る。軽いところから片付けて行こう。レポートを短期間で仕上げればずいぶん気持ちも楽になる。
生活のためには、大学の近くのカフェでハルが講義を受けている時間帯に合わせてバイトをしている。マスターはリオが気持ちよく働くし、客受けするところから結構好きにさせてくれた。
母の遺してくれたくれた貯蓄が僅かながらあるし、当座の生活には困らない。だから自分のことは大丈夫だ。
並行して教授に近づき始めた。さも偶然に教授を見かけた風に、廊下で呼び止める。
「教授! ウィルソン教授!」
「やあ、リオ。君が忙しいことは知っているんだが……あれはどうなった?」「ハルのことですか? ずいぶん打ち解けてきましたし、時々は一緒に飲みに行ったりするようになったんですよ」
「ハルと飲みに!?」
「ええ。相変わらずスケジュールにはうるさいですけどね」
「そうか! いや、それは嬉しいニュースだ! 彼は講義でも全然前と変わらなくてね。君に苦労かけているんじゃないかと心配していたんだ」
「その点は大丈夫ですよ。ハルと一緒にいるの、すごく楽しいから」
リオはにっこり笑った。
最初のコメントを投稿しよう!