1.ちょっかい

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 苦学生。確かにバイトしながら体力にものを言わせて勉強した彼は奨学金をもぎとった。  父は我の強いかなりの実業家。その父と、意思の強い息子がうまくいくわけもなく、息子が父に縁切り状を叩き付け母の元へと行ったのが17歳。  母はリオが18を過ぎた頃、事故であっという間に他界し、父の秘書がしきりに勧める帰宅を断固拒否して、遠く離れたこの大学に転入してきたのだ。   面白そうだと教授の話に飛びついたリオ。最初は取っつきにくい2つ年上のハルに、あまりいい印象を持っていなかった。3日間、よそ行きのスマイルで通した。  リオのその雰囲気に気を許したハル。その3日目の夜、ハルにしては珍しく歓迎の意味を込めてパブにリオを連れ出した。もちろん、ハルの中で予定時間は2時間。10時には部屋に戻って資料を読み直すつもりだった。  穏やかに真面目そうな後輩と学生生活の話をしていたハルと、(さっさと終わんないかな)という心を笑顔の顔に隠しているリオのテーブルに近づいてきた二人は、日頃教授お気に入りのハルを快く思ってなかった。目聡くハルに気づいた一人が早速携帯で仲間を呼び出している。 「やあ、ハル。珍しいじゃん、こんなところで油売ってるなんてさ」 「今日は教授のお相手をしないの?」  ハルは冷めた目でビールを飲んでいた。振り返りもしない。カチン! と来たのはリオ。その気配を感じたのか、ハルはその筋肉質の腕を抑えた。意外とその手には力があってリオは動けずにハルの顔を見た。  そこに後から三人登場。 「俺たちも混ぜてくれよ。たまには一緒に騒ごうじゃないか」  ハルはリオの腕を掴んだまま腕時計を見た。 「悪いな、時間なんだ。またにするよ」  そう言って、リオを促してパブを後にした。   
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