1.ちょっかい

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「なんで黙ってんのさ!」 ハルは足を止めた。 「どうせあいつらの目的はわかってるんだ。君ももうすぐ分るよ」  疑問符のリオの後ろから近づいてくる複数の足音。ハルは『ほらな』とでも言うように眉を上げてみせた。 「おい! あれで帰れると思ってんのかよ! 今日は五人だからな!」  連れは研究ばかりの机の虫。 (仕方ない。僕がなんとかするか) リオはハルの前にずいっと出ようとして、またしてもハルに腕を掴まれた。 「君は関係ないから」  突っかかって来た一人に突きを入れ、横から来た一人に見事な飛び蹴り。一瞬ポカンとしたリオだったが、ハルの背後に回った一人にパンチを入れた。あと、二人。 「あんたさ、何やってんの?」 格闘の意味だと察したハルは短く答えた。 「テコンドー。君は?」 そこでもう一人にリオが蹴り。 「キックボクシング」  残ったのは一人。だが、その一人はあっという間に倒された四人を見て逃げた。後に響く聞きなれた言葉。 「覚えてろよ!!」 「そんなの覚えるくらいならアラビア語を覚えるよ」 そう言ったハルは足もとの4人を抱き起し始めた。 「ほっときゃいいじゃないか! あんた、襲われたんだぜ?」 「いつものことだよ。最初の二人が面倒なだけで、こっちの三人は巻き込まれただけだ」 そう言いながら、大丈夫か? と声をかけていく。  リオはこの大人しいはずの先輩がすっかり気に入ってしまった。 「アラビア語って?」 「エジプトに行くからさ。通訳通すより自分で喋りたい」 「ふ~ん…… 少しなら僕、喋れるよ」 パッと輝いたハルの顔。 「なんでエジプト? ああ、考古学だっけ。昔の墓掘りって面白い?」 「楽しいよ。あれこれ歴史を思い描きながらその足跡を掘り起こしていくんだ」 「へぇ…… つまんなそう」   
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