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「なんで黙ってんのさ!」
ハルは足を止めた。
「どうせあいつらの目的はわかってるんだ。君ももうすぐ分るよ」
疑問符のリオの後ろから近づいてくる複数の足音。ハルは『ほらな』とでも言うように眉を上げてみせた。
「おい! あれで帰れると思ってんのかよ! 今日は五人だからな!」
連れは研究ばかりの机の虫。
(仕方ない。僕がなんとかするか)
リオはハルの前にずいっと出ようとして、またしてもハルに腕を掴まれた。
「君は関係ないから」
突っかかって来た一人に突きを入れ、横から来た一人に見事な飛び蹴り。一瞬ポカンとしたリオだったが、ハルの背後に回った一人にパンチを入れた。あと、二人。
「あんたさ、何やってんの?」
格闘の意味だと察したハルは短く答えた。
「テコンドー。君は?」
そこでもう一人にリオが蹴り。
「キックボクシング」
残ったのは一人。だが、その一人はあっという間に倒された四人を見て逃げた。後に響く聞きなれた言葉。
「覚えてろよ!!」
「そんなの覚えるくらいならアラビア語を覚えるよ」
そう言ったハルは足もとの4人を抱き起し始めた。
「ほっときゃいいじゃないか! あんた、襲われたんだぜ?」
「いつものことだよ。最初の二人が面倒なだけで、こっちの三人は巻き込まれただけだ」
そう言いながら、大丈夫か? と声をかけていく。
リオはこの大人しいはずの先輩がすっかり気に入ってしまった。
「アラビア語って?」
「エジプトに行くからさ。通訳通すより自分で喋りたい」
「ふ~ん…… 少しなら僕、喋れるよ」
パッと輝いたハルの顔。
「なんでエジプト? ああ、考古学だっけ。昔の墓掘りって面白い?」
「楽しいよ。あれこれ歴史を思い描きながらその足跡を掘り起こしていくんだ」
「へぇ…… つまんなそう」
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