23人が本棚に入れています
本棚に追加
/76ページ
そう言いはしたが、もうハルが気になって仕方ない。
(強いし大人しいし本から離れないし親切だし強いし……)
自分の本分の数学も物理もほっぽり出して、こっそり考古学を調べ始めた。そうすれば共通の話題が増える。
ある程度基礎を覚えたリオは、いろいろハルに聞き始めた。自分の専門に興味を示してくれる後輩が嬉しくて、教えるハル。リオが思ったより面倒見がよくて、分かりやすく面白くて先輩というより教師。飲み込みの早いリオは、どんどん吸収していった。
「エジプトに実際行ったことあるの?」
「ああ。教授について一度行ったよ」
(なるほど。それで教授のお相手って言葉が出たんだな)
それを思い出して彼の顔をよく見直すと、意外と……どころか物すごい美形。アマイマスクに短い黒髪。あまり肌は焼けていなくていかにも勉強家という雰囲気だ。だがよくよく見ると確かに体格はがっしりしている。だが、人と付き合うよりは部屋にこもっている方が多い。
容姿にあまり目が行っていなかったリオにはその顔がひどく新鮮に見えた。
一方のリオはハルより頭一つ分近く背が高く、黒い髪はちょっと長めにしていて笑えば愛嬌のいい顔。男性女性の別なく友人と気さくに話すタイプだ。
「墓掘りってさ、幽霊とか出そうで怖くない?」
「出るよ」
「……何が?」
「幽霊」
「またぁ…… 出るわけないじゃん」
「出るんだ。だから塩を持っていく」
「なんで?」
「有効だからさ。あいつらが出てくると邪魔なんだよ。だからそれで遠ざける」
そこからハルの悪夢が始まった。
最初のコメントを投稿しよう!