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最初の場面に戻る。あれから4か月。寮費を面倒見てくれている教授への義理もあり、そしてこの資料の虫が可愛くてリオはしきりとハルを誘い出そうと画策しているのだ。
(だいたいそんなもんばかり調べてるから、幽霊だの塩だのって怪しいことを口走るようになるんだよ)
リオはどうにかしてこの先輩をまっとうな人間に戻してやりたかった。
(それには、遊んで飲んで、女の子! 目標はまず3日間!)
3日間、部屋から引きずり出してやろう。そう決めてから2か月が経っていた。敵は手強い。にっこり笑って誘いを蹴るし、やっと出かけるときちんと腕時計を見る。
(あの『にっこり』になぁ弱いんだよな)
なぜ弱いのか、リオには分らない。ひたすらハルを連れ出そうと、今日も勉強の邪魔をおっぱじめた。
「行きたいなら止めないから。自由に行って遊んで来い」
「一緒に遊ぼうよーー! 僕の顔を立てると思ってさ。ハルを連れて行かなかったら女の子たちに責められちゃうよ」
女子から圧倒的に人気の高いハル。下品なことも言わないし、何よりその顔自体が反則だ。
リオは自分よりもてるこの先輩が不思議でたまらない。なぜ、女の子を遠ざける?
「お前が勝手に約束したんだろ? 責任は自分で取れ」
最近分かってきたことがある。ハルは人が困っているのを見ると弱い。リオは下を向いた。
「僕さ。意外と友達って少ないんだよね。だって同級生ったって、年が違うだろ? なんか、壁を感じるんだよ……」
ハルは困った顔になった。
(来た、来た!)
「ねえ、ハル! 本当に今夜、だめ?」
大きなため息をついて本を閉じた。
「分ったよ。今日だけだぞ」
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