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2.ハルの 『 恋物語 』
「走ってくる」
「無理だって! 止めときなよ、今日一日寝てればいいじゃないか!」
「今日は大事な講義があるんだ」
「時には自分を優先しろよ!」
最後にはリオは頭にきている。
(なんて頑固なんだ、この石頭!)
ハルは目覚めた時に呆然としていた。寝過ごした……しかも、夕べのことをほとんど覚えていない。自分には有り得ないことだった。
そして起きた途端にトイレに駆け込んだ自分。真っ青になったハルを心配するリオは、もう気が気じゃなかった。
「俺は…… どれくらい飲んだんだ?」
「覚えてないの? そりゃもう、水みたいに飲んでたよ。ビール飲めないなんて嘘だろ? ってくらい」
「最初のビール1本くらいしか覚えてない……」
「楽しそうだったよ。酔ってるなんて分からなかったくらいだ」
リオはあの飲みっぷりを思い出した。相手がハルじゃ無きゃこんな言葉は信じない。
リオがくれた冷たいタオルで目を覆いながら、ハルは呻いていた。
「……走ってくる。アルコールを抜く」
ふらつく体をスウェットパーカとスウェットパンツに押し込めると部屋を出ようとする。そのドアの前でリオは立ち塞がったのだ。
(絶対部屋から出すもんか!)
一緒に暮らしてからハルが無理するのが当たり前のような生活をしていることを知った。自分だって無茶な方だ。徹夜で飲みまわる。その足でバイトに行き、そして勉強。
その自分が驚く。しかも、それをまるで外に出さない。
「ハル、なんでそんなに無茶するんだよ。今までどういう生活してたのさ。 心配してくれる人いなかったの?」
ハルは無言で見返してくる。それは『聞くな』という顔。
「僕が心配する ってんじゃだめ?」
「お前が? 心配? どうして……」
「理由なんていらないだろ? 一緒に暮らしてるじゃないか。当たり前のことだよ」
ハルはベッドにへたり込んでしまった。
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