5.無自覚

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5.無自覚

   音楽が変わり、店の中の明かりもいくらか暗くなった。まるでそれが合図かのようにハルは周りを見回すと一人の女性にふっと笑いかけた。 「今日はマリーからなの!?」 明らかにがっかりした他の女性たち。 (から?)  なんの冗談だ? ハルはマリーとやらの腰に手を添えて2階へと上がって行った。リオのことはすっかり忘れてる。 「あなた、どうする?」 リオは今現在の事態の把握に懸命について行こうとしている。 「『あんなもんじゃない』さっきそう言ったよね?」 「ええ、彼、情熱的だから」 この言葉を聞くのはロザリア以来2度目だ。考えたくもないことが頭に次から次へと湧いてくる。 (無自覚って怖い……)  今、ハルは遊ばれてるんじゃない。しっかり遊んでいる。ハルの言葉を思い出す。 『次の日には気分がいいんだ』  そりゃそうだ。発散してるんだから。もう見事なくらいに。男として壊れてる? 誰が? 「どのくらい、その……かかるのかな……」 「それは彼の満足次第よ。それと酔いの醒め具合ね。彼は必ず少し眠るから、その間に私たち支度するの」  つまり女性陣は店に来た時の状態に戻るのか。それならハルには何があったのか分かるわけがない…… (それ、卑怯だろっ! どっちがいい思いしてんだよっ)   
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