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即答とは言えない返事に、より申し訳なさが募るも、それを押し殺して私は手を差し伸べた。
その手に佐野が小首を傾げる。
「手、繋いだ方が恋人らしいと思う。嫌、かもしれないけど」
どこかで私たちを観察しているだろう北崎に難癖をつけられて賭けを無効にされ佐野が不利益を受けないように、できることは全てやると心に決めた。
「嫌じゃないです。むしろ、嬉しいです。ありがとうございます」
社交辞令だと分かっていても、その台詞は私の胸を温かくした。
佐野は年上への気遣いができる子だ。
先輩の私を立てることはいつもする。
だから、何の気持ちもこもってないうわべだけの言葉でしかないと分かってる。
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