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いつもなら痛いと言って手を振り払うところだけど、弱っている相手にそう辛辣な対応はすまいと我慢した。
カウンターにはお母さんと同じくらいの年齢の女性が制服のエプロンを身に付けて待機していた。
私たちが到着するよりも早くその店員さんはこちらに気づき、カウンターから飛び出してきた。
「どうしたの? 迷子かな?」
「お母さんがいないの」
北崎を気遣ってあえて迷子という言葉は使わなかった。
北崎は手を引かれて私の後ろを歩いていたから、このときの表情は分からない。
ただ、どつかれはしなかったので私の選択が正解だったのは確かだ。
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