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「さ、帰るわよ」
「駄目」
不機嫌なお母さんに手を取られてためらいを見せると、お母さんはますます不機嫌な顔になった。
私はその視線を誘導するように北崎を一目見る。
北崎は借りてきた猫のように大人しく、ぼーっと足先を見つめながら椅子の上でじっとしていた。
「あら」
お母さんはそこでようやく北崎を認識したらしく、猫なで声でこう言った。
「怜央君じゃない」
ここで察しの良いお母さんは状況を把握し、店員さんにお礼と北崎を預かる旨を告げて、私といっしょに北崎も連れ出した。
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