C×Cメモリ

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「あれ、傘が……」  なかった。  父から借りた大きくて骨が多くて頑丈な紺色の傘が、来た時に傘立ての真ん中に挿したはずの傘が、ない。  見落としたのかと思い、他のみんなが次々と自分の傘を手に取って帰っていく中、残りの傘を一本一本引き抜いて確認するも、やっぱりない。  どうしようか。  両親は共働きで今の時間はまだ仕事中だから迎えに呼ぶわけにはいかない。  なんとか自力で帰らないと。  この不天候の中、野ざらしで帰るしかないか。  嫌だなぁ。  そう気が遠くなりかけたときだった。
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