C×Cメモリ

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「ありがとう」 「別に。私は何もしてない」  そのクールな対応がとても大人びて見えて、憧れる。  俺もいつかこんな風に飾らない接し方ができるようになろう、と密かに決意しながらガラス張りのドアを開けて一歩外に出て、傘を差した。 「あ」  と後ろに居た先輩と同時に声を出す。  傘の骨が三本折れていた。  生地も捲れて、雨避け効果は期待できそうになかった。  壊れた傘をたたみ、傘立てに戻す。  ただただ無情に降り注ぐ雨の音だけがバチバチと鳴り続ける。
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