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駅までの間はお互い無言だった。
先程まで全く知らない赤の他人だったんだ、無理もない。
かと言って気まずいというわけではなく、むしろその静けさが心地好かった。
この頃の俺はまだそこまで器用じゃなかったから、自分の肩を犠牲にして大雨から先輩を守るなんてことはできなかった。
お互いあまり濡れないように肩を寄せあいながらひたすら足を動かしていた。
今現在感じている先輩の女の子らしい甘い匂いとか華奢な肩とか艶々した綺麗な黒髪を意識する余裕も、もちろんない。
こんなだから、駅に着いたときは二人とも靴が見事な泥んこになっていた。
駅入り口の屋根の下で傘をパサパサ回転させながら振って水を飛ばしてから、たたんで持ち主に返す。
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