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だから「足の再切断についてだけれど。」と言われて、少々驚いてしまった。
この人は病気の緩やかな進行こそ願っているのだろうと思っていた。
「だって、結晶が大きくなった方がいいんじゃないんですか?」
完全に嫌味だと分かっていたけれど、言わずにはいられなかった。
このマッサージだって何か裏があるのだと思っていた位だ。
なのに、目の前の人は憤慨もせず、肯定もしない。
ただ、困ったような笑顔を浮かべているだけだ。
「君は治したいから、協力したんだろ?」
彼が口を開くまでにしばらく時間があった。
けれど、最初に口にした言葉は俺についてのものだった。
治るものなら治したい。
それは当たりの感情として持ってはいる。
だけど、この人の目的の話しをしていた筈なのに、話をそらされた様な気がした。
「俺が聞きたいのはあなたが何故こんなことをしてるかってことですよ。」
マッサージにしたって、そもそもこの人がやる必要があるようには思えない。
なのにこうやって毎日の様に、俺の部屋に来ている。
それが不思議でならないのだ。
「血行がいいと病気の進行が遅れるという傾向があるだろ?」
当たり前の事の様に男が言う。
それは事実だけれど、温めれば風邪をひきにくい程度のものだ。
それを何故この男自らやっているのか分からないという話なのに、今度は不思議そうに男はこちらを見ている。
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