入院。

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入院。

 あれからの彼は、これまで以上に無理をし仕事に打ち込んでいた。  そして、病院で寝泊まりすることが多くなった――『ひとつでも多くの命を救いたい』という思いに憑りつかれたように。  様子は師長が時折寄越すメールと、着替えや差し入れを届ける際に垣間見ることが出来た。一見、いつも通りの穏やかな先生だが、日に日に目が落ち窪み、やつれてきている。  そんな折、師長から『入院させたわよ! あのバカ』と、吐き捨てる様な口調で電話が入った。高熱を出したらしい。  驚いた俺は、はるを連れて慌てて病院に向かった。すると、ベッドサイドには交代で休憩に入ったという師長が、怖い顔で腕組みをして座っていた。 「この期に及んで『仕事する』なんて言い出したから、先生に頼んで点滴に眠れる薬を入れて貰ったところよ。ぐっすり眠ってるけど、心配は要らないわ」    そう言って、病名は『過労』で栄養状態が良くないこと。脱水もあって熱発(ねっぱつ)したのだろうことを説明してくれた。一頻り話した後は、「はるちゃ~ん! 大きくなって、お姉ちゃんになたわねえ」と頬擦りし「おばちゃんと、お菓子買いに行きましょう」そう言うと、さっさとはるを売店に連れて行ってしまった。  点滴に繋がれた彼は、眠っているのに、なお眉間に皺を寄せている。 「先生――俺じゃ、力になれませんか……?」  先程まで師長が座っていた、まだぬくもりの残る椅子に腰かけた豪は、寝息も立てずにひたすら眠らされている青白い顔色の(けん)に向かって、静かに語り掛けた。
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