孤独な二人は

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「まっ、もうばれちゃってるけどね!」  やはり嘘であった。父がすぐに手を回さないはずがない。というか家出が発覚した時点ですぐに手を回すだろう。そして、どのようにしてこの場所を追跡したかは分からないが、父の情報網が優れていることくらい、姉よりも知っているつもりだ。  だからあえてチェーンを掛けて、布石を打っていた。 「があぁ!何でチェーン閉めてんだよぉ」  予想外の出来事だったのだろうか、姉はチェーンを握りしめ、引っ張り千切ろうとしている。 「鎌をかけたつもりかしら。どうせ、捕まえに来たんでしょう?開けませんわ、お引きとり願います」 「ちょっと話があるだけだってばぁ」  姉は半泣き状態で奏を見つめ、扉をガチャガチャと乱暴にし始めた。しばらく乱闘が続き、奏は仕方なく、大きくため息をついて扉を開けてやった。  だが、姉は小馬鹿にするような目付きで堂々と部屋に侵入して来た。  やっぱり開けるんじゃなかった。しかしこうなってしまっては後の祭り。捕まることを覚悟しながらも逃げ出す算段をつけた。逃げるにしても政宗のような心優しい人間は早々現れないと思う。今度は路頭に迷う羽目になるのだろうか。  それも覚悟しておくべきだろう。 「ふーん、一人暮らしにはかなり調度いい物件ね?どうやって部屋を借りたのか、それは聞かないでおくとしよう」  本当は一人暮らしではないし、そもそもここは奏の家ではないことも黙っておいた。 「おや?」  姉はリビングの方を向いて眼をはためかせた。リビングにメンズのジーンズがたたんで置いてあったからだ。  奏は慌ててそのジーンズを持って背中に隠す。 「あんた、男いるの?」 「い、いやぁ、いっつも豪華な服ばっかで足腰痛くなったから、家出中だけでもこんなの着たいなーって思っただけ、ですわ・・・・・・」  焦ってしまい、声がひっくり返ってしまった。ごめんなさい、政宗様。奏は心の中で謝罪した。  我ながら取り繕いの下手っぷりには呆れてしまう。おかげで姉は疑いの眼差しを奏に浴びせてくる。 「ねえ奏ちゃん。あなた一人でここまで来れたようには思えないのだけれど、もしかしてやっぱり誰かいるのかしら?」  まずいまずいまずいまずい。動揺しすぎて冷や汗まで染みてきた。これは流石に言い訳できない。  本当のことを言ってこの女が協力してくれる可能性は正直分からない。何せ直接姉と関わる機会が少なかったから、正直姉の素性は分からないといっても過言ではない。  姉は勝ち誇った目付きで奏を見ている。なんかうざい。もう終わりか、すると。  ─────ガチャ・・・・・・ 「奏、やっぱり帰って、あれ?客人か?」  政宗が帰ってきた。
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