孤独な二人は

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「ま、政宗様、申し訳ありません。身内に見つかってしまいましたわ」 「え?もう見つかったのか。じゃあ仕方ない、帰りな」  真顔で無慈悲にもそういう政宗に「そんなぁ」と力なき言葉しかでない。  政宗は姉の方を向いて。 「連れて帰ってやって下さい」  軽く会釈。迎えが来たのであればここにいてもらう理由もない。箱入りに逆戻りなのだろう。短い共闘関係だったが何の成果もなくおつかれ。  しかし姉からは何も返事がなく、ただ何かを確かめるように政宗をあちこち見回している。数秒の沈黙の沈黙と姉の真顔は玄関内の空気を緊張させた。 「政宗君?君は、あぁ、そういうことか・・・・・・」  何かを思い出したかのような表情で姉が言った。 「え?何がですか?」 「そういえば挨拶が遅れたわ、わたしはこの子のお姉さん」  政宗の質問を無視して告げたその意味深な台詞になんとなく不安を感じた。  そして最高に気味の悪い目付きで。 「雑賀要(さいかかなめ)でぇす。以後お見知り置きを」  政宗は一瞬理解できなかった。以後お見知り置き?どういうつもりで言ったのか。しかし、雑賀という苗字はどこかで聴いたことがある。 「なんで苗字まで言うんですの!」 「あれ、政宗君に名前教えてなかったの?それなのにお世話になっちゃいけないぞ」 「な、名前だけ教えましたわ」  と言う奏を無視した。  奏が慌てて取り繕っていいるように見える。何故そこまで苗字を拒むのかは分からない。 「政宗君はフルネームで教えたの?」 「い、いえ。名前しか・・・・・・」  そういえば、政宗は咄嗟に告げたから苗字まで言うことを忘れていた。苗字で名乗るのが一般的かもしれないが、沙悟浄だと呼びづらいし覚えづらいと思ったからだ。 「じゃあお二人はまだお互いを何にも知らない訳だ。政宗君、君のフルネームは?」 「沙悟浄政宗です」  政宗はおずおずと告げると、奏ははっと、その名前に何かを思い出しかけた。政宗はまだ悩んでいるようであるが。 「まだ思い出さないの」  要が呆れたように問いかける。一体何だ。何が頭の中を過ぎっているのだろうか。だが、とても重要なことだったと思う。現在の状況と何か交わることなのか。考えれば考えるだけ頭痛がする。まるで政宗と奏自身の脳が思い出すことを拒むかのように。  奏もほぼ同じ感覚だった。お互いは間違いなく初対面のはずだ。しかし、何か既視感を覚えている部分もあったからだ。  すると、頭の中で何かが弾け、そこでの発言はほぼ同時だった。 「ま、まさか、雑賀家の・・・・・・」 「まさか、あの沙悟浄家の・・・・・・・」  そうか、思い出した、奴だ。  家出をしたきっかけでもあるその二人の関係性とは。 「俺の」 「わたくしの」 「「婚約者───────!?」」  その時の要は万遍の笑みだった。
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