孤独な二人は

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 そこはかつて商店街であったであろう小さな通り、閉店した多くの店の中の一軒のシャッターの閉まった店の前で俯いて座っている少女を見つけた。  隣に大きいリュックサックを放り置き、周りには政宗と同じ店で買ったと思われるハンバーガーのごみが散らかっていた。きっと、彼氏に振られたとか、政宗と同様家出であろう。何事もないように無視して通り過ぎようとすると、急に少女はすすり泣いた。  急な泣き声に驚き、思わずたたらを踏んで少女の方を見遣ってしまう。  一筋のきらめく涙。悲哀を感じさせる、前髪で隠れほんの少し見せた潤んだ瞳。  どんな道を歩いて来たのか、まるで、草木の覆い茂る道を歩いて来たかのように、お嬢様を表現させる豪華で華やかな白色の洋服は所々ズタボロになっていた。  すると、流石に政宗に気付いた少女は目を合わせてきた。  あまりじっと見すぎたから怪しまれたか。その何とも不思議な少女は怯える様子も逃げる様子もなくじっと見つめ続けた。  少女は徐ろに立ち上がると服に付いた汚れをはたいた。 「あの、道を教えて下さいませんか?わたくし家出しまして、それで道に迷ってしまって・・・・・・」  こいつ箱入りだな。一瞬でそう思えた。  何故見ず知らずの男に家出したことぶちまけちゃうのだろう。もし俺じゃなかったらお持ち帰りされてたかもしれない。ましてや夜だぞ、声をかける相手は慎重に選ばないと後で後悔することになる。少しかわいそうな子だなと、政宗は胸を痛めた。  少女は身長はそう高くはなく、高校生に見える。おそらく親と喧嘩して出て行ったとかそこら辺に違いない。 「もし、聞いてますか?道を尋ねてますのよ」  なおも少女は話した。上目遣いがとても気になる。いや、何よりも気になるのはその口調である。丁寧というか、上品というか、気品溢れるその姿はまさにお嬢様さながらの風貌だ。  しぶしぶ、応えようとしたのだが、流石にここは注意をしてあげて家に帰すのが得策だろう。こんなに暗いと事件に巻き込まれる可能性もあるし、親御さんも心配しているだろうし、何より政宗も暇ではない。  情が移る前にさっさと去ろうと思い、政宗は少女を説得する。 「あぁ、なんだ。家出か何かは知らないけど、家に帰った方がいいんじゃないかなぁ。こんな暗いと事件とかもあり得るしさ」 「いやよ、今更引き返せませんわ!」  すると政宗に詰め寄るように反論した。  相当なプライドの持ち主だな。と思いつつも、家出直前に政宗も同じことを言っていた手前、無下に否定するのも筋違いだと感じた。  すると少女は先程の勢いを失い、伏せるように視線を逸らしながら、何か思い詰めたような表情を見せた。 「それに、戻っても解決しない問題が待っているだけですもの」  そして、解決しない、解決出来ない問題からここまで逃げてきた。まったく俺と同じ境遇に立たされたのだろうな。きっと彼女との出会いは客観的に見れば偶然で、もっと深くを覗けば必然的な出会いだったのかもしれない。  類は友を呼ぶように、これが運命的なきっかけであったら、とてもロマンチックな話ではないか。いや、気の所為なのだろうが。  ならここで俺はどうすればいいのか、どうするべきなのか。少女を助けるべきか、無視をするべきか、選択と葛藤の渦が政宗の脳裏を抉るように廻り続けている。
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