孤独な二人は

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 止めておこう、それか親御さんに連絡をして、それから連れて帰ってもらおう。そう思った矢先、彼女を少し可哀そうに思っている自分がいた。  別に、ロマンチストとか、ヒーローを気取る訳ではないが、純粋に人を助ける気持ちが芽生えたのだ。  とりあえず、事情を伺うことにした。 「なんで家に帰りたくないのか、訳を聞いていいか?」  すると少女はこくりと頷き答えた。 「わたくしは家出をしてきました。詳しいことは今のところは伏せておきたいのですが、要はわたくしの人生は両親のためのものだったことに気が付きましたわ。だからこれは、独立ですわ」  独立、なるほどそういう表現があるものか。  そうだ、これ以上親の言いなりにはならない、親不孝者と言われようとも、俺の人生は俺のものだ。誰かのものではなく、紛れもなく政宗のものだ。自分の人生らしく一人で生き抜いてみせると誓ったんだ。  同じ境遇に立たされた彼女と、何か協力し合えることがあるとするならば、両親に対するストライキだ!それを彼女と主張してやろうと。 「俺も実は家出をしてきたんだ。なら、俺たちは運命共同体ということで」 「え?」  家の権力とか、業務提携とか、そんな事情知ったことか。親の道具じゃない。  成功も、失敗も、共にできる相手がいることは、互いに心強いだろう。 「独立同盟だ。仕方がないから連れて行ってやるよ」 「は、はい!ありがとうございます!」  その彼女の瞳は輝きに満ちていた。これから起こる苦難も、荒波も二人で乗り越える覚悟が彼女にあるかどうかは分からないが、一人でもどの道通らずには進めない道だ。  あわよくば、掃除炊事洗濯くらいは手伝わせようと思う。ついでに社会の現実も学ばさせてやる。こいつ絶対箱入りだし。  寄り添う二人は夜の道を歩きはじめ人混みに紛れに行った。少女は完全に政宗を信頼しきっているようで、身を任せているようだ。  我ながら思い切ったことをした。  人混みに溶け込んだ二人はまるでカップルのようで、周りと見分けつけるのは困難だ。  電車を乗り継ぎ、バスに乗り、かなり遠くに来たところで、都会の営みを忘れさせるような街並みが現れた。  新しい道を歩むような二人の足取りは軽やかで、どこかワクワクするような気分を覚えた。父は息子の家出をどう感じるのだろうか。自分の行いを振り返ってくれるのなら、それは嬉しい。  俺の自由はこれからはじまるのだ。  間もなく、木造のボロアパートが見えて来た。ここの二階が俺たちの新しい居場所だ。
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