Red Diamond

1/5
前へ
/5ページ
次へ
 しとしとと雨が降る日だった。こううっとうしい雨が降っていると、どうしても仕事に行きたくなくなるのだが、そうもいっていられなかった。司は、左団扇で生活できる富裕層ではない。溜息をついて仕事の準備をしていると、机の上の電話が鳴った。 「……?」 司の携帯に電話をかけてくるのは、2人ぐらいしかいない。一人は上司、もう一人は…。 「え……」 ディスプレイには、全く覚えのない番号が表示されていた。どこかのセールスの電話か、と内心で勘繰りながら出て見た。 「もしもし?」 「あ、司様ですか?私です、使用人の橋田美香です。覚えていらっしゃいますか」 「…橋田さん?鷹司家の?夏姫(なつき)の?」 「はい。覚えていらっしゃいますか」 「ああ…夏姫がどうかしたのか?」 「はい…」 電話の向こうで夏姫付きの使用人橋田は、明らかに唾を飲んでから告げた。 「            」 「え…」 「お時間、頂けますか」
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加