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トランクルームにしまってあった夏姫の遺品を全て自宅に運び込んだ司は、自室で、夏姫から遺贈された万年筆を懐から取り出した。
「…おれは、もっと長く使ってもらいたかったんだよ。こんなに早く死にやがって」
明らかに使い込んだ痕跡が確認できる万年筆を一通り眺めてからケースに仕舞い、蓋を閉じようとしたのだが…。
「……?」
蓋が、締まらなかった。奇妙に上に持ち上がった万年筆が邪魔になっていることに、今更気付いた。
「…台の下に何か入っているのか…?」
ケースの中の万年筆を固定するための台座を持ち上げると、中空になっている台座下には、3cm四方程度の小さなケースが入っていた。
「は…?」
不思議に思った司が小さなケースを出して開くと、中には、2カラットの大きさのレッドダイアモンドが納められ、ケースの中には、小さく折りたたまれた紙片も入っていた。<一生の付き合いとなる親友を引き寄せるでしょう。「孤独」や「不安」を癒したい時にも有効です>と書かれていた。
「夏姫…」
司は、ケースを額に当てて前のめりになり、必死に声を引き絞った。
「お前は、確かにおれの親友だったよ…!!」
The End.
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