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将来の夢
「それなら涼は今、死んでどうするつもりだったんだ?暇だからってだけで、そんなのリスク高いだろ。消えて無くなるか、永遠の今をもう一度始めるか、夢から覚めてしまうか。全部、どれにしたって、暇だからって理由だけでその選択しようと思うなんて」
「そうかもしれない。だから結局死ねなかったのかもしれない。でもやっぱり、さっきは気がそがれただけで、生きる理由が見つかったわけじゃない」
「生きる理由ね。いるのか?それ」
「いるんじゃないの?将来の夢とか」
「将来の夢ねえ」
「れおんは将来の夢かなったの?」
「叶ってないよ。叶わないだろ、小学生の頃の夢なんて。なんだったかなぁ、小学生の頃の夢。たしか、モデルだったかな」
れおんは、口に出してから、「夢は叶わない」なんて小学生に言ってよかったのだろうかと考えてしまった。
「小学生の頃、好きなモデルがいたんだ。それも女性の。姉ちゃんの読んでる雑誌のモデル。で、その隣に立ってる男性モデルになりたくてさ」
「でもダメだったんだ」
「ダメだったよ。現実はそんなに甘くない」
「そういう情報ばっかり。いいかなあと思ったものは甘くない、そんなことばっかり」
「まあなあ。そりゃあそうだろ。でも別に、夢を持ったからってかなえなかったら全部無駄ってほど深刻に捉えなくてもいいんじゃないか?夢とか特にないなあって言ってた友達が社長になってたり、宇宙飛行士になりたいって言ってた奴が普通に実家の農家継いだり」
「上手くいかないのね」
「上手くいかないねぇ」
れおんは苦笑いした。
「夢も理由もなくても、生きている限りは生きているのを当然だと思って生きればいいと思うよ」
「夢も理由もなくても、か」
「これは俺の推測なんだが、涼はきっと稼げるようになったら世界が明るく見えるぞ」
「お金の問題ってこと?」
「平たく言えばそういうことだな」
「元も子もないっていうか」
「そうだな。でも結局、やりたいことをやるにはお金がかかるし、それは事実だ。広い世界に出るにはお金が必要なのは、当たり前のことだ」
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