掌編 とあるモブ子の妄想。

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 ――私は、寺町通アーケード内の紅茶店にバイトをしている大学生。名前など気にしないでほしい、漫画や小説でいうところのモブ女子だ。モブ子とでも思ってもらっていい。  そんな私がバイトを始めて一か月。最近気になってならないのは、近くの骨董品店のこと。  古き良きカフェを思わせる店づくりにいるのは、渋めのオジサマだった。うん、イメージピッタリ。そう思っていたのに――。  尋常ならない美男子がいることに気が付いたのは、数日前だ。艶やかな黒髪、白い肌、すらりとした長身、整った顔立ち。その姿だけでも反則なのに、白いカッターシャツに黒いベスト着用ってどういうこと?  分かってるよね、自分の魅力を存分に分かってるよね。  何、あのアームバンドにあの笑顔。  そんなあざとすぎる美男子は、同じ店でバイトしている女の子と交際しているらしく、この界隈では有名な名物カップルだそうだ。
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