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第一章 『最初の依頼』
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「私を殺した人物を知りたいんです」
革張りのソファーにゆったりと座る中年の男は、鷹揚に言って微笑んだ。
その向かい側で小松勝也は、彼が何を言っているのか分からず、目を瞬く。
目の前にいるこの男は、もちろん幽霊ではない。五十代だという実年齢よりも若く見えるほどに、生き生きとした様子だ。
聞き間違いだろうか?
小松が、あらためて問い詰めようとすると、
「それでは、詳しいお話をお聞かせくださいますか?」
隣に座る家頭清貴が、にこやかに尋ねる。
家頭清貴を事務所に迎えて、最初に舞い込んできた依頼は、こんな奇妙なものであり、小松は前途に多難を感じずにはいられず、額に手を当てた。
とりあえず、話は前日に遡る――――。
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