緋炎の武将

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にわかに空が暗くなり、太陽を覆い隠すように暗雲が低く垂れ込める。 「さすが、徳子(とくこ)殿。平家の血を色濃く受け継がれた御方だ。」 忠度(ただのり)は、陸を睨み低く呟いた。 「平家の姫、徳子殿の神通力は最強ですな。これほどの嵐を呼ぶ力がおありとは。圧巻ですぞ。」 忠度(ただのり)の側近、火月(かづき)は感嘆の声を上げた。 「我もこれほどの術にお目にかかったのは初めてだ。」 「嵐が我らの船に追い風になれば、優位に立てましょうぞ。」 「我ら海軍の後方、沖合には帝がおわす。此度(こたび)の戦、負けるわけにはゆかぬ。」 忠度は、沖合の船に掲げられた錦の御旗を振り仰いだ。 「帝には天の御加護がありまする。帝を(いただ)く我らが負けるはずがありませぬっ!!」 火月(かづき)が拳を握りしめ、闇が広がる海原に言い放った。 刹那 暗雲が渦を巻き、雷が閃光を放って海を割るように落ちた。 矢のように降り注ぐ豪雨が、紅蓮の旗を血のようにどろりと染め上げる。
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