緋炎の武将

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ヒュュッッン‼ 耳元を鏑矢(かぶらや)が掠めた。 「奴ら、突然の嵐に慌てていまする。」 「この豪雨では、火矢など意味をなさぬ。」 忠度の言葉通り、火矢は船に届くことなく、大粒の雨に空しくたたき落される。 「先鋒‼」 忠度の後方から、平家の大将、宗盛(むねもり)の合図が下る。 「進めぇっ‼」 「我らが錦の御旗に大義ありっ‼」 「おおおぉぉっ‼」 波面を揺るがす(とき)の声。 宗盛(むねもり)の怒号と共に、船は岸に向けて舵をきった。
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