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平家の船が疾風の如く進み出でて半刻、突如として広がった目の前の光景に、忠度は目を疑った。
屋島の入江。
岩が突き出て、切り立った岩礁の陰から、どっと船があふれ出てくる。
八咫烏の軍旗を目の当たりにした忠度は、言葉をなくした。
叩きつける雨を物ともせず、怒濤の如く平家の船を、左右から挟撃する。
平家の船は、奇襲を受け次々と沈められていく。
「痴れ者がっ!!」
「源氏に乗り換えたのかっ!!」
忠度の全身を、一瞬にして怒りが突き上げた。
「殿っ‼」
異変を感じた火月が、船の後方から走り寄る。
「これは一体っ‼」
「熊野が我らを裏切ったのかっ‼」
火月は、顔を真っ赤にしてぶるぶると震えた。
「火月っ‼」
忠度は、怒りを炸裂させ、火月を一喝した。
「ははっ‼精鋭部隊は、整いまして御座いまする。」
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