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眼は血走り、背には緋炎の神気が陽炎のように立ち昇る。
火柱を背負ったまま、忠度はゆっくりと精鋭部隊を振り返った。
「熊野の外道どもが、我らを裏切った!!」
「狙うは敵の大将、義経の首ただ一つ!!」
「これより我らは、船を捨て陸を目指すっ‼」
忠度は、平家代々に伝わる神剣、小烏丸を抜き、曇天に突き上げた。
見事な波紋が、赤々と燃え上がる火柱を反射して、殺気を放つ。
「皆の者っ‼我らが敵、源氏を討ち滅ぼしてくれようぞっ‼」
「これより先、生きては帰れぬと心せよ!!」
「我に続けっ!!!」
「「おぉっ!!」」
精鋭部隊の鬨の声と共に、忠度は船べりに足を掛け跳んだ。
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