難破船 鯨號

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奇妙なのは それが船底の塗料であろうが マストの木片であろうが デッキに飾られた薔薇であろうが 頑丈に編まれた帆布であろうが かつて生物であったモノ 例えば人間であったとしても ここに沈殿物として落下して来る頃までには すべてあらかた同じ形状の塵になり その嫌な匂いや音まで 似通っていた こんな所に匂いなどあって どうなるものでもないのに ミシ… そもそも一体化してるのだから あたりまえだけど それは当然のような当然で それは必然のような偶然 微粒子は時間の経過とともに沈澱する し続けた こんなに小さなものが いったいどうやって あの強大な水圧を掻い潜り ここまで辿り着いたのだろう それを見ない神の目をすり抜けるのか 誰の目も届かない所で生まれる渾沌 カッコーン… ここは誰の目も届かない 海の底 40e23703-9c36-4867-8605-af089cca6703
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