難破船 鯨號

7/7
前へ
/8ページ
次へ
この誰にも見えず 誰にも聞こえない場所で なんと どこからともなく集まった 船影らが あの難破船の周りをゆっくり旋回し始める いつ沈んだかもわからない その泥濘みに埋もれた 鯨の様な鉄の塊は まるで神聖な塔の様に 神々しさを増す 嗚呼 悠久の時の流れの中からすれば 生命のなんと儚き事か 嗚呼 永遠とも匹敵する時の中からすれば その悲しみも その苦しみすら なんと稀少な瞬きに感じられる 3cb08a66-d445-4674-bdde-f29376cb9742 たとえ 瞬きとはいえ 強大な光を放つ 命 ガガガ…ガッゴーン! 難破船の下の地盤が揺れた 沈没船はいずれ浮上する 例えば すべての者に 忘れ去られたとしても
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加