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朝
部屋の小窓から入ってくる朝日が顔に当たり…その眩しさに、じわじわと頭の中が覚醒してくる。
手に触れた心地いい滑らかな肌の感触と、その温度に…要はゆっくりと瞬きを繰り返した。
あぁ…
幸せが内側から溢れ出てくるようで、心が暖かい。
満たされていく感情に、抑えきれず笑みを浮かべる。
自分の腕の中で、静かに寝息を立てているその人は…少し幼げで、無防備に身を預けたまま眠っていた
…良かった、夢じゃない。
「咲兎…」
サラサラとした短い髪に指を通す。
深く眠っているのか…まるで起きる気配はない
無理…させたな
色々あって、疲れてたのに…
震える体で、俺を受け入れて
狭い中を揺すられながら、必死にしがみついて…
…可愛かったなぁ
そっと背中へ腕を回し抱きしめると、柔く足先まで絡める
その喉元には…抱いている時に付けた、赤い鬱血の跡が残っていた。
ネクタイすれば隠れるだろうか?
見つけたら…多分、怒られるだろうな
だって、雨瀬が付けたキスマークと紛れるのも嫌だったし…
これは、嫉妬だ。
何より気に食わないのは…彼奴が残したキスの位置が、綺麗な鎖骨や滑らかな括れ、二の腕や細い腰と…俺が特別好きな場所と被っていることだ。
あいつ、絶対ホクロの位置とかも全部把握してるだろ。
いや…俺もそうだから
…取られたくない、負けたくない…失いたくない。
雨瀬が知っている咲兎を、俺が知らないなんて嫌だ。
少なくとも…過去がどうであれ、今一番咲兎の近くにいるのは、俺だから
首筋に顔を埋め、軽くリップオンを鳴らし口付ける。
キュッ…と閉じられた目元が、猫みたいで愛らしい。
規則正しく繰り返す呼吸に耳を澄まし、ウトウトと誘われるように目を閉じた。
もう少し、眠って
咲兎が起きたときに…側にいないと
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