無表情な先生は

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カフェでの時間をαの高校生らしく、授業やテストについて軽く話したあと。 さらには、クラスの誰々はΩの彼女と付き合っているらしい。とか噂話で時間を潰した。 不意に要は、明日出さなければならない英語の課題を思い出して「あ、やべぇ…」と呟いた。 「ん?何が。」 「英語の課題やってねぇ…」 「なんだ、あんなのその日の内に終わらせちゃえばよかったのに。なんなら僕が教えてあげようか。」 「あー…。教えてもらうんだったらスーさんの方が分かりやすくて良いなぁ。」 「ん?別にいいぜ、暇だし。」 「おっしゃ!あんがとスーさん。」 「ちょっと!僕よりスーの方が分かりやすいってどういうこと!」 * 席を立って店を出た直後。 学校の寮に向かって歩いている途中、要たちと同じ制服を着た一人の生徒が、三人の横を走り抜けて行った。 要よりも頭一つ分背が低くかったその生徒のあとを、洲津浬と沙句条は引かれるように目で追いかける。 知り合いだったのだろうか?でもあんな生徒αのクラスで見たことない。 「…今のあいつ。」 「うん、発情期起こしかけてたね。」 「え…マジで?」 「「……は?」」 二人から、お前嘘だろう。みたいな目を向けられ、要はおずおずと後ずさった。 「めっちゃ甘い匂いしてたじゃん。新伊ってホントにα?」 「あぁ、今のは流石にわかったろ?」 「うっ…俺が一番気にしていることをずけずけと聞かないでくれ…。てか、発情期起こしかけてたってヤバイんだろ?助けなくて良いのかよ。」 まともなことを言ったつもりだったが、今度は二人してため息を吐かれた。 「俺たちがどうやって発情期中のΩを助けるんだよ。」 「そうだよ、下手したらフェロモンに当てられて襲っちゃうかもしれないだろ。」 「…?何で好きでもないやつを襲っちまうんだよ。」 「あー、何て言うかなぁ…。」 スーさんはΩが走り去っていった方に目を向けた。 「俺たちが襲っちまうって言うよりは、俺たちαの本能がΩを求めるようにできてんだよ。本能には逆らえない。もし発情期中のΩのフェロモンを直で浴びちまったら、理性なんてぶっ飛んじまうからな。」 「…αの本能…」 「そ、だから俺たちにできることは、早くその場を離れて警察に連絡すること。αの抑製剤をしっかり飲んでおくこと。」 「あぁ、そのための薬だったのか…」 「知らないで薬飲んでたの!?まぁ、でも…新伊は本能薄そうだから大丈夫そうだよね。」 「う"っ…」 その言葉が、再び要の心を突いた。 確かに、発情期のΩが真横を通りすぎていって気が付かないなんて、俺の中のαはちゃんと生きているのだろうか? 本能死んでるんじゃないか? 抑製剤飲み過ぎてんのかな… 「薬しばらく止めてみようかな…」 「ん?なんか言ったか。」 「いや、何でもねぇ…」 「早く寮に帰ろうよ、ちょっと雨降りそうだしさ。」 サクの声に空を見上げると、いつの間にか晴れていた空は厚い雨雲に覆われていた。 確かにこれは一雨来そうだ。 三人は急いで寮へと向かい帰っていった。 * 荒く息を吐きながら、Ωの生徒は急いで病院に向かっていた。 どうしよう。きついっ。 こんなにも早く発情期が来ると思っていなかった。まさか薬を切らしてしまうなんて…
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