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軽くスマホを走らせ『最後の晩餐』と調べてみる。かの有名な聖人様は最期の最後に何を食べたのだろうか、そう思ったのだ。だが検索しても出てくるのはやれ弟子の位置だとかやれ保存方法だとかしか出てこない。どうして彼の最期に食べたものよりも周りの構成に目が行ってしまうのか、それはもはや聖人様よりも例の巨匠がすごいのでは?と思ってしまう。素人にはそんなことどっちだっていいのだが。
そういえば関ケ原で負けた西軍の総大将は確か敵から渡された干し柿を断ったという逸話を思い出した。大志を持つものは最期まで命を大事にするとかなんとか。
(……………)
私は上を見上げてトイレの場所を探す。こういう看板があるのは本当に便利だ、田舎の商店街にもこういうのがあればいいと思うが流石にトイレは綺麗でないと勝手な偏見を持ってしまう。これでは暗に田舎は汚いと言っているようではないか。都会の方がよっぽど汚れているというのに。
「………ふぅ」
大した量ではなかった。ここに来る前に一度していたから当然そうであろう。ズボンのチャックを閉めて手を洗いに洗面器に向かう。手を出して自動水栓の裏にあるセンサーのところに手を当て水を出す。手を洗いながらチラリと目の前の鏡を見る。
そこにはクマがあって目つきが鋭く何人も殺してきたような男の顔があった。ついでに言うと髪もボサボサだ。
(……………)
大志なんて大それたものは持ってない、偉業を成し遂げてすらいない。ただひたすらPCに向かって必死に仕事をしているだけの男。それがあの封筒のおかげで偉人のように突然死ぬ。思わず口から笑いが漏れた。
「………まるで奴隷だな」
鏡の中の男は口の端を釣り上げていた。けどその目は笑っていなかった。男は曲げていた背を伸ばしポケットからハンカチを出してそのまま鏡の外に消えていった、
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