最後のサンドイッチ

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 不思議と減っていた腹が満たされていることに気付いた。よくあるあれだ、何かに集中している時は他の器官が動くのをやめるあれだろう、そう思った。するとどうであろう、今までネオン街の如くキラキラと輝いていた東京駅の地下街が普通の街と同じぐらいの明るさに見えてきてしまったのだ。  何故だろう?結論は出なかった。代わりに思い出したことがあった。地元にまだ行ったことがない喫茶店があった。チラリと腕時計を見る。午後1時21分を指していた。どうやら結構な時間東京駅をぶらついていたらしい。スマホを開いて路線図を見る。ここから最短で1時間ぐらいで地元に帰れる。  (………行ってみるか)  私は少し早歩きで地元行の電車があるホームへ向かった。  「………変わらないな」  昭和の街を謳っている地元の駅には逆立ちをした例の像があり、駅の中や街の至るところに映画の看板が設置されていてその中に学生たちが書いた絵もいくつかある。というかどれも猫を使ったパロディーだからクスリと笑ってしまう。  (………さて)  コンビニと夜に開くラーメン屋の間の道を進む。その先にある整形外科と大量に並ぶ墓小屋を横切り、目の前に小さいマンションを目に収める。そこの下のところにシャッターを下ろした薬屋に同じようにシャッターが下りていて移転しましたと書かれた元クリーニング屋と目的地の喫茶店があった。  (…………あれ?)  だがおかしなところがあるのに気が付いた。その喫茶店の隣にはマンションへ上がるための階段があるはずなのに初めからそんなものがなかったかのように喫茶店が横に拡張されていた。私は目を擦ってもう一度よく見た、けれどもやはりマンションへの階段は見えず、ただちょこっと広くなった喫茶店が見えるだけだった。それに名前が「ら・ふらんす」になっている、前までは別の名前だったのに。  (後ろの方に階段でも増築したのか?)  と思ったものの見る気にならなかったのでとりあえずお目当ての喫茶店の中に入った。  
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