0人が本棚に入れています
本棚に追加
家に帰りながら今日の出来事を改めて振り返ってみると、珍しく美人とのやりとりが重なったなと遼は思う。
白川華夜という不思議な女の子と接したこと、城ヶ崎からアメを貰ったこと。
でも所詮、凡庸な自分が彼女たちとこの先深く関わることなどないと断言できる。
せめて勉強ができたのなら、大きな会社に入ってお金を稼げれば、平凡なルックスの自分に収入という魅力が付加され、城ヶ崎や白川が少しは興味をもってくれるだろうかと考えてみるが、そんな人間は世の中にはいくらでもいるし、彼女たちが金銭だけで恋愛感情を自分にもってくれるとは思えず、やはり収入だけでなくルックスも必須だと感じる。それにあいにく勉強も得意ではない。運動も平均的だし、特技もなければ、自分の誇れる点など何一つ思い浮かばない。
さらに特段の個性もない自分では、どうひっくり返っても彼女たちが興味をもつことなどないと絶望的な気持ちになる。
特別な人間が周りにいなければ、こんなこと考えもしなかったのにと遼はため息をつく。
気づくと横に自販機が見えたので、炭酸ジュースを買おうかと迷ったが、2本目はさすがにお金の使いすぎだと思い、もう少しで家に帰り着くので我慢することにした。
遼は歩きながらスマホの画面を見ようとしたとき、一瞬横切った路地裏へと続く通路に違和感を覚え、2歩進んだところで立ち止まる。
なにか変なものが目に映ったような気がした。
いや、明らかに誰でも気づくような変な気配がした。
遼は振り返って2歩進み、横切った路地裏への通りに目を向けた。
遼の目は見開かれていく。
最初のコメントを投稿しよう!