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ワケあり少女
高校2年生の田中遼(たなかりょう)は教室で帰り支度の準備をしていた。
すると後方の座席から数人の驚きの声があがる。
遼は振り返ってその中心にいる城ヶ崎鏡花(じょうがさききょうか)に目を向けた。
鏡花は微笑を浮かべて話している。
「もちろん連絡先も交換したわ」
鏡花の周りにいる者たちは羨望の瞳を向けて口々に言う。
「美人っていいよね」
「だよねー。街中歩いているだけでそういうお誘いがあるんだから」
「そこって高級レストランでしょ?」
「しかもイケメンって」
どうやら城ヶ崎が青年実業家に声をかけられて、ご馳走されたという話題。そんな誘いについていくのは危ないのではないかと遼は思ったが、その点は杞憂だったようだ。
そのイケメンは危ない誘いと受け取られないように、十二分に配慮した誘い方をしたらしい。鏡花個人に関する情報は一切話さなくていいこと、食事をする場所は大通りにある有名なレストランであること、話し相手になってくれるだけでいいということ、その他これなら俺もついていくだろうなと思えるような諸々の安心できる案を提示したらしく、城ヶ崎はついていくことにしたようだ。
「で、付き合うの?」
直球の質問を女子が投げかける。
色っぽボブのセピアベージュの髪を揺らして鏡花はくすくすと笑う。
「まだわからないわ」
鏡花の美しい顔立ちに笑みが浮かぶのを見て、周りの者たちはいつも通り見惚れる。
遼も例外なく鏡花に見入ってしまう。
モデルのような整いすぎた顔立ちに恋したのは高校入学式のことだ。城ヶ崎と付き合うことができたらどんなに幸せだろうか。
遼は帰り支度を終えて、席から立ち上がり教室を出る。
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