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僕と明日菜の関係は中学校まで遡る。
僕らが中二の夏休みに、明日菜の家族は僕の町へと引っ越してきたんだ。
二学期の始業式後、体育館から教室へ戻ってくると、担任の竹内先生が不自然にニコッと笑って言った。
「よし、転入生を紹介するぞっ」
え? 今の先生の不敵な笑みはなんだ?
そう思っていると、ガラッと戸が開く音がして、明日菜が教室に入ってきた。
僕はこのときの衝撃を、きっと一生忘れないだろう。
肩までかかった薄茶色の髪の毛。遠くから見ても茶色とわかる、淡く透明感のある瞳。それから、肌が薄くて血管が透けてるからなのか、眼の周りにはほわっとサクラ色の天然自前のアイシャドウが…なんとも可愛いらしい。
「 うわっ、………うつくしいぃっ…」
その人のあまりの美しさに、僕は目が眩んでいた。
初めて人を美しいと思った。
その姿は颯爽としていて、凛として、堂々として、そしてとても可愛らしかった。
僕といえば、北関東のいなか町に住む、イガグリ頭のスポーツ刈りの、ごくごく一般的なサッカー少年であるわけで、僕と同じ次元に彼女がああして存在していることを、しばらくは理解ができなかった程だ。
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