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「おはようございます」
「おはよう、マコ」
ソファに座って手元のスマホから顔をあげて挨拶をしてきた浅黄誠に、葵は返事をしながら、その膝へと視線を移す。
「なに、寝てるの?」
誠の膝を枕にして完全にソファで横になっている人物を指差しながら葵が聞くと、それに気づいた純が不満そうに言う。
「え~、リーダーずるい! マコ、俺も」
楽屋に入るなり構ってモード全開の純に、誠は面倒くさそうに答える。
「お前はゲームの邪魔するから駄目。今、いいスコア狙えそうなんだから」
それだけ言うと、誠は手元のスマホへと視線を戻してしまい、隣では純が拗ねたように誠を睨んでいた。
その光景に葵は笑いを堪えながら、楽屋の端へと荷物を置く。
誠は純と一緒に事務所に入ってきた後輩で、その正体は葵と同じ吸血鬼。葵とはいわゆる幼馴染みの関係だ。
誠は別件で人間界へと来ていたのだが、すでに任務を終えて本来ならば魔界に戻っているはずなのに、何だかんだと理由をつけては人間界へと残り、今は芸能界で再会した葵達と一緒にアイドルをやっている。
年は葵と純よりも下の二十一で、身長も一六四とメンバー内でも小柄な方といえる。
それでも何でも器用にこなして、しっかりとした性格の誠は頼りになる存在だし、特に純に対しては保護者のようで口調にも遠慮がない。
だが、実はこの二人が恋人同士だということはメンバー内では公認となっていて、誠の純への素っ気無い態度も愛情の裏返しだろうと葵達は思っている。
すると、今までふて腐れていた純が何かに気づいたようで、急に誠に顔を近づけた。
「あれ……マコ、髪形変わった?」
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