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人間界で修行中
『たった一人の、運命の相手を見つけなさい』
その言葉は、昔まだ自分が幼少期で魔界に住んでいたころに祖母から言われたものである。
吸血鬼にとって、血を吸うという行為は普通、人間を相手に行うものである。
だが、その場合はある程度の加減をしなければ相手を殺してしまう可能性があるのだが、そんな心配をしなくてもすむ相手が同じ魔界に住む住人だ。
同じ魔界の住人なら、多少は無茶な吸血行為を行っても殺してしまう心配はないが、そもそも異種族の相手に自分の血を与えてくれる奇特な者は、弱肉強食の世界である魔界では少ない。
いくら死なないとはいえ、一時的な体力低下など身体に全く影響がないわけではないからだ。
それでも、運良くそんなパートナーと呼べる相手を見つけることが出来れば、吸血鬼は本来の能力をより長く維持することが出来る。
そして、世界にたった一人だけ『運命の相手』が存在するらしく、その相手と出会えた時は吸血鬼本人もパートナーである相手も、お互いに本来なら眠っているはずの未知の能力に目覚めることが出来るという吸血鬼の一族のみが知る言い伝えがあった。
(本来なら眠っているはずの能力……それって、どんなものなんだろう。俺にもいつか、そんな相手が見つかるのかな)
そんな淡い希望を捨てずにいるのは、魔界では吸血鬼の一族に属している赤星葵。
王家に仕えるエリート家系の生まれで、その王家からの命により、七年前から正体を隠して人間界で暮らしている。
意外にも地位や能力が高い者ほどその特殊な力を上手く隠し、実に自然にこの人間界へと馴染んでひっそりと生活しているのだった。
もっとも、葵はこの能力とは関係ないが、決してひっそりと言えるような生活を送ってはいないわけだが……。
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