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その純の突然の質問に、葵と誠は驚いた表情を見せた。
何故なら誠の少年のような短い髪は、色・形ともに普段見ているものと変わらない。
表面には純と同じ明るめの茶色を染めているが、誠は内側を濃い茶色にしたため純よりも控えめな色になっている。
だけど以前、二人の髪の色が密かにお揃いなんだと嬉しそうに話していた純の横で、少し照れた様子を見せていた誠の姿は今とまったく同じだ。
「髪形が変わったというか……」
だが、どうやら葵と誠本人の驚きは別だったようで、誠は唖然とした様子で答えた。
「さっき、ヘアメイクさんに前髪と横を少しだけ切ってもらったけど」
それを聞いて葵はさらに驚いて誠の髪をじっくり見直してしまう。
それでも、ワックスでふんわりと整えられている前髪などは長さが変わったようには思えない。
つまりは、その程度の変化だったのだろう。
しかし、純一人だけは納得がいったようで満足げに誠を褒める。
「あ、やっぱり? マコは耳や眉がちゃんと見えてた方がいいよ」
恋人からの細やかな気遣いに、誠の機嫌に変化が見え出した。
「そ、そうかな?」
嬉しさを隠すように呟いた誠の声には、さっきのような硬さはすでに含まれていなかった。
「うん、こっちのが可愛い♪」
純が満面の笑顔で止めの一言を放った瞬間、誠の周りを覆う雰囲気が見事に変わる。
「可愛いより、カッコイイの方がいいんですけどね」
照れ隠しなのか、そう軽口を返した誠だが、やっぱりどこか表情が柔らかい。
そして、スマホをしまうと同時にいきなり立ち上がり、ご機嫌な様子で純へと言う。
「ほら、純さん。早くメイクとか済ませようよ。それから一緒にゲームしよ」
「りょーかい♪」
純が元気よく返事をすると、誠も一緒に二人仲良く鏡の前へと移動していく。
「あ、純さんの衣装、俺取ってこようか? ここで着替えちゃった方が早いでしょ」
「じゃあ、その間にメイクの準備しとくね」
「うん。すぐ戻るから」
そう言って、誠は純の衣装を取りにいそいそと楽屋を出て行った。
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