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「…………」
あまりの展開に葵が呆然と二人の姿を見送っていると、いきなりボソッと声が聞こえた。
「相変わらずだねぇ、あの二人も」
「あ……」
声の方を向くと、さっきまで誠の膝で寝ていた青砥悠陽が欠伸をしている。
「起きたんですか?」
「ん~……いきなりマコに退けられたから」
誠に退けられた時に痛めたのか、悠陽は首をほぐす様に動かしながら葵の問いに答えた。
悠陽はこれでもメンバー内で一番年上の二十五で、一応グループのリーダーを務めている。
しかし、グループ結成時に先輩である葵と悠陽の二人がリーダー候補に挙がり、葵からの熱烈な推薦によって決まってしまったリーダーなので、悠陽本人は特に自覚を持っているわけではないようだ。
最年長なのに身長は一六三と一番低く、のんびりな性格の悠陽はリーダーとしてみんなをまとめて引っ張っていくことはしないが、そのほわんとした笑顔でみんなを癒す効果は絶大である。
前の事務所から一緒にデビューして、今の事務所にも二人で移籍してきた葵は、悠陽のことを誰よりも尊敬しているが、それすら悠陽は気づいていないようだ。
「ところでさ……いつになったら葵くんの敬語は直るの?」
「あっ、ごめん!」
悠陽に注意され、葵は慌てて謝る。
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