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「大丈夫だよ、ただ落ちるだけなんだから」
「だったら、お前がやればいいだろ!」
何の慰めにもならない純の言葉に対して、葵の返事もまるで子供のような言い分だ。
だが、ここは少し純の方が大人だったようである。
「それじゃ、対決した意味ないでしょ」
正論を返され葵が黙ってしまうと、純は今度は励ますように葵へと声をかける。
「一、二……三! で、俺が押してあげるから頑張ろうよ! 葵ちゃん」
「……うん」
さすがにこれ以上はスタッフに迷惑をかけられないと判断したのか、葵は純の言葉に素直に頷いた。
それを合図に純が葵の背後へと近づく。
「じゃあ、いくよ」
「お、おう」
葵が覚悟を決めて目を瞑ると、純の手が葵の背中へと添えられカウントが始まる。
「一……二」
次の『三』という掛け声で押されると、葵が覚悟していたその時だった。
葵の中で予想していた掛け声よりも早く背中へと衝撃があり、油断していた葵の体重は前へとかかってしまう。
「バカ、お前、二で押し……ぎゃあぁぁ~!」
普段、どちらかと言うと二枚目路線の姿からは想像出来ないくらいの情けない悲鳴をあげて葵は地上へと向かって落下していった。
その葵の姿を見て、純はやっぱり楽しそうに盛り上がってしまい、下で合流した時には拗ねた葵に口をきいてもらえなくなってしまった。
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