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「……そんなに良かった?」
「え……?」
いつの間にか顔を離していた雅弥に顔をのぞき込まれながら聞かれ、葵は理解できずに聞き返してしまった。
すると、クスッと小さく笑ってから雅弥が右手で葵の頬を撫でて言った。
「なんか、トロンとした顔してるから」
その言葉に我に返った葵は、急激に熱が顔に集まるのを感じた。
きっと色も真っ赤になっているはずだ。
(年下の男にキスされて惚けるなんて恥ずかしすぎる!)
慌てて雅弥から離れようとすると、ちょっとの差で腕を掴まれ引き戻される。
「葵くん、可愛い」
「なっ……んむっ」
反論しようと開いた口を、またもや雅弥のキスで塞がれてしまい、悔しいけれど抵抗する力が弱まってしまった。
(……だって、予想以上に気持ちいいんだもん)
おとなしくキスを受け止める葵の服の裾から、雅弥の手が滑り込んできてわき腹を直に撫でる。
「あっ……」
そのまま手が上へと移動してきて、軽く指先で胸の突起を摘まれピクッと葵の身体が跳ねた。
「反応いいね」
唇を舐めながらそう囁かれ、恥ずかしさから雅弥の身体を押し戻そうとするが両方の胸を弄られると、力が抜けていく。
すると、いきなり後ろへと押され、男二人で横になるには少し狭いソファへと押し倒された。
「うわっ!」
驚いた葵を気にすることなく、雅弥は葵の服を首もとまで捲り上げ直に胸を舐めてきた。
「あ……んっ……」
葵が小さく声を零してしまうと、さらに大胆に雅弥が舌と指で左右を刺激してくる。
「ちょっ……ミヤビ!」
「……なに?」
とっさに葵が大声を出して制止すると、少し不満そうに雅弥が聞き返してきた。
「あ、その……ここで、すんの?」
「えっ……?」
葵の問いに、雅弥が少し驚いたような表情を見せた。
だって、絶対に汗をかかないわけがないし、ソファを汚してしまったらシーツとかと違って洗濯することも出来ない。
雅弥のお気に入りであろう家具をそんなことで汚してしまうのは、申し訳なさすぎる。
「それに、シャワーとか……」
今日は外のロケで汗をかいたし、いくら着替えたとはいえシャワーまでは浴びていない。
こんな時は、いつも以上に丁寧に洗いたくなるのが当然だろう。
そんな心配までして、葵はふと一瞬我に返った。
(俺ってば、なに完全にミヤビを受け入れ態勢になっちゃってるわけ?)
そのことで急に恥ずかしさがよみがえってきて葵が俯いてしまうと、それを見た雅弥におでこにキスをされた。
「じゃあ、葵くんが先に使っていいよ、シャワー」
雅弥はそう促して葵を浴室まで案内してくれた。
扉を閉める瞬間、雅弥が「その間に色々と準備しておくから」と言った言葉が、ずっと葵の頭の中で回っていて、すぐにでも逃げ出したくなってくる。
だからといって、いつまでも浴室に立てこもるわけにもいかず、いつもより時間をかけて身体を洗った葵は悩んだ末に自分の服を着直して雅弥のもとへ戻った。
「あれ、服着ちゃったんだ?」
浴室から出た葵を見た雅弥にそう聞かれ、葵は無言で頷いた。
さすがにこの状況で、バスローブ一枚なんて無防備な姿を晒す勇気は葵にない。
そんな葵の心理を読んだのか、雅弥は笑いながら葵の耳元で囁く。
「脱がせる楽しみがあるからいいけど」
なんて言葉を残して、雅弥は浴室へと消えていった。
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