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(いつの間にそんなセリフ言うようになったんだよ!)
一人残された葵は、今までに見たことがない雅弥の一面に翻弄されていた。
葵の中の雅弥は昔と変わらずに自分に懐いてくる可愛い後輩の存在だというのに、今ここにいる雅弥は葵の知らない一人の大人の男だった。
(あんなに可愛かったのに……)
なんだか自分を置いて雅弥だけが成長してしまったような感覚に、葵は悔しいような寂しいような複雑な想いでいっぱいになる。
しばらく色々と考え込んでいた葵だったがそんな気持ちを振り切るために、すでに温くなってしまったコーヒーを飲み干すと、ちょうど雅弥が浴室から戻ってきた。
「なんだよ?」
驚いたような表情でバスローブ姿の雅弥が見つめてくるので、緊張のせいもあってか葵は少しぶっきらぼうに声をかけた。
「……残っててくれたんだ」
「は?」
雅弥の呟きが聞こえなかった葵が聞き返すと、その問いには答えず、雅弥は嬉しそうに葵へと近づいてきた。
「移動しようか」
そう言って笑う雅弥の顔に葵は戸惑ってしまう。
(その顔は、いつもと同じなのに……)
そんなことを思いながら、葵は雅弥に手を引かれて寝室へと連れて行かれる。
ベッドにたどり着くなり身体を押され横に倒された。
条件反射で身体を起こそうと思った目の前で、雅弥がバスローブの前をはだけさせたのを見て動きが止まってしまった。
前回の役作りの時に本格的に作り上げた肉体は見事で、悔しいけれど年下の雅弥に色気すら感じる。
「場所も移したし、もう大丈夫だよね」
そう言って、雅弥が葵に覆い被さるようにキスをしてきた。
「あっ、ふぁ、ん……」
いい加減、慣れてきてしまったのだろう。
雅弥の首へと腕を回し、その動きに合わせて葵も自分から積極的に舌を絡めていった。
(だって、ミヤビに完全に主導権を渡すなんて悔しいじゃないか。俺の方が年上なんだから)
そんな地味なプライドを嘲笑うかのように、雅弥の手が服の裾から滑り込んできて葵の胸を撫でる。
「んぅ……」
小さく息をのんだ葵の反応を見逃さなかった雅弥は、葵の耳元へと唇を寄せた。
「さっきも思ったけど……葵くん、胸弱いの?」
「し、知るか! そんなこと」
咄嗟に葵はそう言い返していた。
実際、自分でそんな自覚はなかったし、今までそこを触られてもこんな感覚になったことはない。
「そう? しっかり反応してるけど」
言いながら雅弥が器用に片手で葵の上を脱がせ、露わになった胸の突起を指で摘まむと、そこが硬くなるのが葵自身にもわかった。
それどころか、そこを弄られ続けると別の所までも反応してくる。
「やめ……」
これ以上はまずいと思った葵は、無意識のうちに雅弥の身体を押しのけ、身体を捩って逃げようとした。
すると、そんな葵の動きを封じるかのように雅弥の手が移動していき、いつの間に外したのか全開になっていた下へと滑り込んでくる。
「んあっ!」
いやらしい手つきで自身を撫でられると、下着の上からでも十分に感じてしまう。
「あっ、お前……ずるい、んぅ……そこ」
声が上擦りそうなのを抑えてそう言う間にも、雅弥の手は止まることなく動き続ける。
それどころか白々しく「なんのこと?」なんて聞いてきた。
「んぁ……あっ、ぁ……」
素直に答えてやるのも悔しくて、葵は雅弥の問いには答えずに必死にその刺激に耐える。
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