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「別に構いませんよ」
特に気にせず葵がそう答えると、スタッフは安堵の笑いを零しながら言った。
「良かった。ほら、見てくださいよ。あの正面入り口」
スタッフに言われ、葵と純が窓から外を覗き込むと、そこには二十代から三十代を中心とした女性の集団が出来ていた。
中には学生らしき制服姿までいて、平日の昼間だというのに、なぜこんなに集まれるのだろうかと思うが、皆一様におしゃれをしていて、どこか落ち着かない様子だ。
「うわぁ、すごい。なに? あれ」
「何、言ってるんですか?」
純の素直な疑問にスタッフは笑いながら答える。
「あれ、Monsterのファンですよ」
自分達のグループ名を告げられ、二人は驚きながらその集団へと再度、視線を向けた。
「あ、ほんとだ。あの子、葵ちゃんのウチワ持ってる」
「ファンの間の情報網は早いですからね~」
そう言いながら、スタッフはファンがいる正面から離れるように、地下の駐車場へと静かに入っていった。
そして、建物内への入り口付近へと止まる。
「それじゃあ、本日はお疲れ様でした」
「はい、ありがとうございました」
「お疲れ様でーす!」
スタッフと軽い挨拶を交わして葵と純は車のドアを開けて外へと降りる。
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